ガンマ線天文学は、人工衛星による観測とチェレンコフ望遠鏡による地上観測 によって、大きな進歩をとげている。しかし、10GeV〜100GeVの領域には、 これらの観測によっても観測が困難な「すきま」が存在する。この「すき ま」を埋めるためには、検出器の感度向上が必要である。

現在の超高エネルギーガンマ線観測に用いられるチェレンコフ望遠鏡の分解能は、 約0.1°である。これは、有限個の分割鏡を用いていることや、収差などにより 結像イメージが広がるからである。また、そのカメラに使用されている光電子増 倍管(PMT)はせいぜい数百素子で、そのカメラ上で、1もしくは2素子しか得る ことのできない低いエネルギー領域の小さいイメージは鮮明に捕えることができ ない。収差のない理想的な光学系と、受光素子の数を増やした高解像度カメ ラを用いたシミュレーションでは、高エネルギーガンマ線を検出する エネルギー閾値が下がるとともに、角度分解能等が向上することが分かっている。 さらに、4000m級の高山で10m口径のこのような新しいシステムの望遠鏡を用いて 観測すると、20GeV〜100GeVのエネルギー領域で非常に有効である。

本研究では、このような高分解能チェレンコフ望遠鏡の実現に向けて、望遠鏡の 光学系の設計を行ない、高分解能チェレンコフ望遠鏡の有効性を確認した。 光学設計の方針として、現在の主流の望遠鏡の分解能(0.1°) より、一桁近く(0.02°程度)まで精度が向上するように改良を目指した。 また、実現性を見越して構造が簡単でコストが低くなるような光学系になるよう に設計し、その評価を行なった。
その結果、望遠鏡の光学系として、球面鏡+フレネルレンズ2枚を用いると、 入射角1°で約0.025°まで像の広がりを抑えることができ、一桁近い精度向上 を得ることができた。