チベット空気シャワーアレイデータを用いた銀河面方向からの10TeVの拡散ガンマ線成分

本田 朋子


Abstract


   銀河宇宙γ線は、超強磁場を持つパルサーなどの点源を別にすれば、 陽子などの宇宙線が星間物質と衝突して発生した π0中間子から生じたり、高エネルギー電子によって 制動放射および光子の逆コンプトン散乱で生成される。 銀河面方向では物質密度は高いことから、γ線放射の過剰が期待される。 数MeV〜数GeVの領域では、これらの過程から予想される エネルギースペクトルと観測データがよく合っている。 また、人工衛星COS-BやCGROのEGRETによる観測から、 銀河面に沿う拡散γ線の強度分布の嶺が得られている。 数GeV以上の高エネルギー領域では、 π0中間子によるものが主であると考えられてきたが、 最近のEGRETの観測による〜1GeV以上の拡散7線の強度が 考えられていたものより多かったことからこのエネルギー領域での γ線発生機構がπ0中間子ではない他の成分によるのではないかと 考えられている。
   そこで、チベツト空気シャワーアレイで得られた 1990年6月から約3年問のテー夕を解析して、 10TeV領域での銀河面方向からのシャワーの過剰の有無を調べた。 しかし、銀経20°〜110°の範囲で銀河面からの過剰放射は、 特に見られなかった。このことから、銀河面からの広がった 10TeVγ線強度の上限値が90%の信頼度で、 2.9 × 10-14cm-2・s-1・sr-1 と得られた。