超新星残骸等からの超高エネルギーガンマ線のTibet IIアレイ による検出

田中 敦士


Abstract


   銀河系内に閉じ込められている宇宙線の強度と、超新星爆発時に その衝撃波加速によって生成される宇宙線の強度がよく一致する ことから、宇宙線の起原が超新星爆発時の衝撃波ではないかと指 摘されている。このことは超新星残骸からのガンマ線を検出する ことで直接的に検証される可能性がある。Naito-Takahara Model によると、十分に広がった衝撃波により加速された宇宙線は星間 空間のガス雲中の原子核と衝突し、π0中間子が生成され、 それが崩壊することによりガンマ線が出てくるとしている。また そのガンマ線のスペクトルは、ガス雲中でのFermiの統計加速によ ってベキ型であることが再現される。これらのことから、超新星 残骸からのガンマ線を観測することにより、そのスペクトルに制 限を与えることは重要であると思われる。また、超新星残骸にお けるガンマ線発生機構として、残骸中の磁場を加速された電子が 走ることによるシンクロトロン輻射の可能性も出てきている。 π0中間子によるガンマ線と、シンクロトロン輻射による ガンマ線は、それぞれ親の加速限界が異なるであろうから、スペ クトルの折れ曲がりの位置も違ってくるはずである。本論文で解 析した10TeV領域のガンマ線は、ちょうどこの折れ曲がりの位置 に相当しており、スペクトルが落ちるのか伸びるのかという興味 が持たれる。
   そこで、Tibet I 空気シャワーアレイで得られた1990年6月からの 約3年間のデータに加えて、面積が拡張された Tibet II空気シャワ ーアレイで得られた1995年10月からの約1年間のデータを用いて58 個の超新星残骸からのガンマ線の過剰の有無を調べた。結果、約3.1 σの有意性で6.6 × 10-14cm-2s-1 のガンマ線fluxが得られた。また、かに星雲からのガンマ線の上限値は 95%の信頼度で6.65 × 10-13cm-2s-1で、 以前よりも厳しい制限をつけることができた。また、活動銀河核やパルサー などの点源からのガンマ線の有意性も得ることができた。