TeV 領域銀河宇宙線の太陽による影のシミュレーション

菅 雄一


Abstract


   チベットでの TeV 領域宇宙線の観測において、 太陽と月の方向を解析すると、その方向の宇宙線強度に くぼみができることが発見された。 そのくぼみを、太陽または月による影という。
   宇宙線を構成している成分は陽子、ヘリウムといった荷電粒子が 主である。 そのため、電荷を持った宇宙線が地球に飛来するまでの間に 太陽磁場、太陽風による惑星間磁場、地磁気の効果の影響を受け、 影が本来ある太陽・月の位置から少しずれた位置にある。
   月の影のずれは地球磁場の影響によるものであるため、ずれの変化はほとんど ないが、太陽の影については、1990年〜92年は太陽の視直径以上ずれていたが、 1996 〜 97年には殆どずれていないことが判明した。 このことから、太陽の磁場、太陽風による惑星間磁場は太陽活動との関連性が 示唆される。 太陽の磁場、太陽風による惑星間磁場の振る舞いはあまりよくわかってきませ んでした。
   今回のシミュレーションは、太陽の影のずれの原因を調べるため、 太陽近傍の磁場を双極子磁場、太陽風がつくるアルキメデススパイラルの 形の惑星間磁場を仮定し、これに地磁気を加え、1 〜 100TeV の陽子及びHe による影のシミュレーションを行った。