なだれ型フォトダイオード(APD) の特性テスト

山田 要介


Abstract


   1986年に高エネルギー委員会によってJLC(Japan Linear Colider)計画が提案された。 この計画は、全長25Kmに及ぶ重心系エネルギーがTeV領域にわたる 電子陽電子線形型加速器を建設し、ここでの高エネルギー素粒子実験で 新しい素粒子の発見や素粒子の標準理論の検証など、 必要な実験事実を得ることを目的としている。
   電子陽電子線形型加速器は衝突エネルギーの全てが反応の素過程に使われ、 衝突により発生する事象が綺麗なイベントが多いため、 細かい解析が比較的容易である。 また、リング型加速器では放射光によるエネルギー損失が大きいため、 加速させるエネルギーに限界がある。そういった特徴からこの線形型加速器が選ばれた。
   この論文ではJLC計画に於ける素粒子反応のエネルギーを測定する カロリーメータ部分の光検出器の候補の一つである なだれ型フォトダイオード(APD)の特性を調べた。 JLCの中央検出器のカロリーメータ部分は約1.5テスラもの強磁場であり、 磁場の影響を受けない検出器を使用する事が理想である。 そこで、磁場の影響を受けにくいと考えられているAPDに関して強磁場中での テストを筑波の高エネルギー加速器研究機構において行なった。 さらに、温度変化や逆バイアス電圧変化によるAPDのゲインの 安定性についても調べた。 その結果、APDは1.5テスラもの強磁場中において、磁場から受ける影響は 0.7%以内であることが分かった。この様な高磁場中に於けるAPDの 特性の実験が行なわれたのは初めてである。