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最先端研究 物理学科
宇宙粒子 / 電子物性I / 光・量子エレクトロニクス / 電子物性II / 理論研究 / 原子核研究 /
光物性 / 高エネルギー宇宙物理学
宇宙粒子
宇宙観測と素粒子物理からエネルギー、物質、生命、自然原理の起源にせまる。
山本 常夏 准教授
6個の核子からなる原子核の励起状態の構造
アンデス山脈麓に設置された宇宙粒子検出器
(Auger Collaboration 提供)

  天文学は空にきらめく星たちから来る“光”を見ることから始まりました。昔の天文学者たちは、毎日決まった時間に昇る太陽を見たり、月の上に何がいるのか 想像したり、あるいは夜空の星の動きから明日の出来事を占ったりしながら宇宙や自然の成り立ちを理解しようとしました。そのために望遠鏡を開発し、詳細な 観測をし、その運動を計算しました。そこには常に発見と驚きがありました。毎日決まった運動を静かにしていると考えられていた宇宙空間は、実は想像を絶す る莫大な高エネルギー現象に満ちていました。そこでは途方もなく長い時間をかけ熱と光を発しながら星が誕生し、やがてその星が大爆発と共に消滅し、時には 光では観測できないブラックホールとなって周りの星を飲み込んでいます。星の成長と爆発によって宇宙空間にまき散らされた埃はやがて次の星の素となり、そ の星が集まって銀河を作り、その中で私たちも形成されています。宇宙の理解が進むにつれ宇宙観測も大きく様変わりしました。現在では星からの光を見るだけ ではなく、ニュートリノや原子核といった粒子の検出、見えない重力源の探索や地球外起源の生命の痕跡探しなど多種多様な観測が行われています。言い換える と宇宙に対して新しい“窓”を開けて、新しい宇宙観測を行っているのです。特に極微な素粒子の研究と壮大な宇宙観測を結び付けた「高エネルギー宇宙物理」 が私の研究テーマです。

 

6個の核子からなる原子核の励起状態の構造
切手になった
MOA-暗黒物質探索-望遠鏡

 宇宙を奥深く、つまり遠くの宇宙を見ると、そこに何があるのでしょうか?宇宙では遠くを見ることは過去を見ることになります。10億光年のかなたの星か ら来る光は10億年前に星を旅立ったからです。遠い宇宙、つまり遠い過去を見て行くと宇宙の誕生に突き当ります。宇宙はとても小さくてエネルギーの高い状 態、ビッグバンから始まったと考えられています。このビッグバンで宇宙を支配する物理法則が形成され、我々や地球を含む今日の宇宙に成長していったわけで す。では逆に小さい世界を見ると何があるでしょうか?私たちの体は分子からできていて、分子は原子から、原子は素粒子から出来ています。これら小さな世界 を見るためには、分子や原子から素粒子を取り出さなければなりません。そのためにはエネルギーが必要になります。つまり小さな世界を見ることは大きなエネ ルギー現象を見ることになるわけです。どんどんエネルギーを上げて、より小さな世界を見るとビッグバンに突き当ります。なぜなら、宇宙で一番エネルギーが 高く一番小さな物はビッグバンだからです。言い換えるとビッグバンは遠い所でおきたことではなく、今私たちがいるここでおこり、私たち自身もその残骸なわ けです。ですから粒子の中を奥深く研究しても、宇宙を奥深く観測しても同じところに行きつくわけです。私たちの研究室ではこのエネルギーの高い粒子によっ て宇宙観測を行っています。宇宙では現在でも想像を絶する莫大な高エネルギー現象が起きています。そこから発せられる高エネルギー粒子を観測し、その粒子 が宇宙のどこでどのように生まれたのか研究するわけです。

  宇宙から来る高エネルギー粒子を測定するためには巨大な検出器が必要になります。宇宙規模の高エネルギー現象を捕まえるために、地球を検出器として使うこ とになります。地下の奥深くに検出器を置いたり、砂漠や高山の上で測定したり、宇宙ステーションや人工衛星に設置した望遠鏡を地球に向けたりします。私が 今力を入れているのは、Auger計画という国際共同研究です。この計画はアメリカのシカゴ大学を中心に15の国が参加していて、アルゼンチンにある広大 な草原に検出器や望遠鏡を設置し宇宙から来るエネルギーの高い粒子を検出しています。この計画以外に、私たちの研究室では地球に飛び込んでくる極限エネル ギー粒子を国際宇宙ステーションから観測するJEM-EUSO計画や、ニュージーランドや沖縄の天文台にある望遠鏡を使った暗黒天体探索、地球外惑星や生 命の痕跡を探す実験など様々な角度から宇宙観測をおこなっています。

6個の核子からなる原子核の励起状態の構造
宇宙ステーションに搭載されるJEM-EUSO望遠鏡(予想図)
(JEM-EUSO 提供)

  もともと私は大学に来るまでは星にも天文学にもあまり興味をもっていませんでした。望遠鏡を覗きながら星のカタログを作ったり未知の天体を探すのは何か受 け身で消極的な感じを持っていたのです。しかし大学に来て宇宙観測に接してみると、そうではないことに気がつきました。現在の宇宙観測はわずかな信号、目 には見えない物質 やごく稀な現象をとらえるために様々な手法を使います。宇宙から降ってくる物を待つのではなく捕まえるのです。そのためには古い方法から新しい装置まで我 々が現在持っているあらゆる方法を駆使して、より遠くを、より鮮明に、より高精度で測定します。今の宇宙観測の魅力の一つに最先端の装置を使いながら壮大 な科学を堪能できることがあると思います。これらの研究を通して、私たちを作っている“物質”や“生命“の起源、さらに宇宙を支配している法則に迫ろうと しています。宇宙を研究して学ぶことは基礎科学だけではありまません。ここには最先端の装置があります。古い技術は決して無くなることはありませんが、古 い装置は新しい物に置き換えられていきます。新しい装置に触れそれを制御することは、将来さまざまな分野で活用できます。また、この分野では統計処理をは じめとした数学を使いコンピュータを駆使してデータ解析をおこないます。物理学は様々な技術と知識が有機的に結びつき発展しているのです。学生諸君には物 理学科で、基礎科学の研究から最先端の技術までさまざまな分野に触れながら物理学を堪能していただきたいと考えています。

<2007年6月現在>

 
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